美幸 

ある日 店の中で見覚えのある後姿に美幸はハッとした、そこには仕事仲間だろうか 二人で棚の上にある物を指さして、話をしている石上の姿があった。

「石上さん こんにちは」

美幸は笑顔で話しかけた、驚いたように石上は振り返ると、

「あ〜三上さん! こんにちは」

「買い物ですか?いらっしゃいませ」

と 軽く二人に会釈する。 美幸は偶然とはいえ店で石上に会えた事がなぜか嬉しかった。

「ええ 足りない材料があったんで」

仕事仲間が材料をみて回ってる間二人は立ち話をした

「この店で働いてたんですか?」

「ええ もう2年になります」

「そうなんですか! 知ってたら、来る度に探したのに」

美幸は一瞬ドッキとした。。。。

「よく来るんですか?」

「ええ 朝早くとか仕事の途中とか帰りとかきますよ」

「なんだ〜私こそ知ってたら石上さん一生懸命探しましたよ」

二人して本気とも冗談ともとれぬ会話をしてその時は別れた。

その日 美幸は仕事の間中石上のことを考えていた、家に仕事で来る時しか会えない 相手だと思っていた。この日美幸のなかで一気に石上への想いが膨らんで行った。

「もっと あの人の事が知りたい。。。」

家に帰り夕食の時両親に昼間の出来事を話すと、母は

「美幸 石上さんはいい人よ」

さり気ない母の一言が美幸は何故か嬉しかった。

翌日 美幸は仕事の間中石上の姿を探した、だがこの日石上は店には来なかった、
次の日もそして3日たっても4日が過ぎても石上は店に姿を見せなかったのである。

「仕事忙しいのかな? よく来るって言ってたのに。。。」

それから2〜3日たった夕方

「三上さん!」

店の外で商品チェックをしている美幸を呼んだ、美幸はそれが誰であるか直ぐに分かった。

「石上さん!。。。。。よく来るなんて言っててあれから全然来ないし。。。。」

美幸は本心から拗ねてみせた。

「言わなかったけ。。。あの次の日から仕事でずっと川崎行ってたんだ」

「そんな事。。。。聞いてないよ。。。もう行かなくていいの?川崎?」

「うん 今日で終わった! 仕事まだ終わらないの?」

「え! もう終わるけど。。。食事でも連れてってくれる?」

美幸が笑顔で尋ねてみると。

「あ〜昼も食べずに終わらせて来たから腹ペコで!」

「それって。。。。もしかして?」

「うん 早く三上さんに会いたくて」

美幸は顔が火照るほど嬉しかった、

「待っててね!着替えて家に電話しとくから」

「は〜い でも仁美ちゃん連れてってやらなくていいの?」

美幸は一瞬考えた。。。

「今日はお母さんに任す、二人で食事しよ!ここに居てね!」

と 美幸は小走りに店の中に消えていった。

それから1時間後、二人は駅前の中華料理店にいた、石上はよく食べ、
そして二人はよく話した。
石上が美幸より3才年上で独身である事、名前は剛と言う事も美幸は初めて知った。

「仕事 大変なんだね 川崎まで行くなんて」

「うん 量販店なんて暇な時期は仕事ないからね、千葉とか埼玉とかも行く事あるよ」

「朝 早いんでしょ?日帰りでいくの?」

「うん 仕事の内容にもよるけど、近場のビジネスホテルとかサウナとか
泊まっちゃう事もある」

「ふ〜〜ん ちゃんと食事とって体休めなきゃ駄目だよ」

二人はすでに恋人同士のようだった、

「うん明日正式な見積書作って提出したら2日間休めるんだ」

「え!その日わたしもお休み!父も母も仁美連れて親戚の法事に行くの」

まるで示し合わせたような偶然だった。

2日後 二人は結ばれ美幸は快楽のなかで溺れ、
その花園に剛の熱いものをそそがれたのであった。

「7時になればあの人に会える、7時までには迎えに来る」

美幸は時間が気になって仕方なかった、まだ5時前である午後から何度時計をみたろう。。。

「もう仕事終わったかな?メール来てるかな?」

あの嵐の様な快楽の日から5日目の今日、美幸は待に待ったお泊りデートの日でたった。
美幸はあの日次の休みを剛に告げた、剛は何が何でも今の仕事を今日中に終わらせ
7時までには向かいに来ると約束してくれた。

「現場でたらメールしとくから」

と 言われた日から二人は剛の仕事の都合もあり会えずにいた、それでも電話でそして
メールのやり取りで寂しくはなかった。

6時に仕事が終わると更衣室に戻りすぐにメールをチェックしてみた。。。。
そこには 5時17分 着信

「今 現場出ます、7時前には到着予定」

と あった。美幸は思わず微笑んだ、そして幸せな気分に満ち足りていた。
そんな美幸の様子を見て取った同僚のパートさんが

「あれ〜美幸さん メールみて嬉しそうね!いい人できたのかな〜〜」

と 美幸を冷やかされ笑ってごまかしたが

「ここ2.3日美幸さん急になんか綺麗になったもんね〜」

美幸はドッキとした、別に化粧を濃くしてるつもりも変えたつもりもない、
同僚のパートさんが耳元で

「女はね満たされると綺麗になるのよ うふ」

「満たされるって。。。。。」

美幸は耳元まで熱く顔が火照るのを感じた。

「こりゃ〜図星だな!美幸さん幸せにならなきゃね!」

美幸が勤め始めたころから美幸の境遇を知って何かと気遣ってくれた一回り年上の
木田であった。

「木田さん ありがとう でも まだそこまでは。。。。」

「そっか。。。皆には内緒ね!進行状況ちゃんと報告してよ」

「うふ は〜〜〜〜い!もうすぐ彼迎えにくるんです」

「そっか じゃー急がなきゃね、お疲れさん」

と 木田は更衣室を出て行った。美幸は木田の気配りが嬉しかった。
着替えを済ませ店の外に出ると同時に剛の車が駐車場に入ってくるのが美幸には見えた。

剛にもすぐに美幸の姿が確認出来た、美幸の側にスーっと車を付けると笑顔で
美幸を迎えた。

「お疲れ様」

「おつかれ〜」

二人を乗せた車は夜の街へと消えていった。

剛は東名高速を御殿場に向かって走らせていた、美幸は全て剛任せで行き先など聞くこともなく夜の高速を流れ行く外灯に目をやりながらこれからの事を想像しながら幸せな気分にひたっていた。

「今日ねぇ メール見てたら木田さんって言うパートさんに冷やかされちゃった」

「最近 綺麗になったねって」

「へ〜そうなんだ、この前一緒にいたやついたじゃん、あいつも綺麗な人ですねって言ってたよ」

「ふふ 子持ちのおばちゃんなのにね、で なんて答えたの?」

「。。。。う〜〜ん わすれた」

「ふ〜〜ん」

すこし間置いて。

「オレの嫁さんになる人だから、言い寄っても駄目だぞって言い聞かせといた」

「ふふふ!よく出来ました!」

美幸は嬉しかった、まだ正式にプロポーズされたわけではないが二人の気持ちが同じ方向に向かっていることが確認できた喜びがそこにあった。

剛は御殿場インターを降り近くのレストランに車を止めた、

「ここ 大きな海老フライ食べさせてくれるんだ、食事して行こう」

「お酒 飲むかい?」

「車 大丈夫?」

「ここから直ぐだから、すこしなら大丈夫だよ」

「う〜ん じゃ〜ちょっとだけね、私すぐ酔っ払っちゃうから」

「じゃー1本だけビール飲もう」

二人はグラスを合わせ料理が来るまでとめどない話に笑った。

「わ〜本当大きいね!美味しそう!」

運ばれてきた料理をみて美幸ははしゃいでいた、食事を終えレストランを出ると剛は車を山中湖方面へと走らせた。

「あの海老フライ美味しかった〜お腹いっぱい」

「美味しかったでしょ、今度 仁美ちゃんも連れてこようね」

「うん あの子喜ぶよ、海老好きだから」

美幸は幸せな気分で満足だった。やがてモーテルの看板が幾つも目に飛び込んで来るようになった。
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